How to handle Dice.
〜サイコロの扱い方〜
4.考察3節にて様々なサイコロに関する確率データを明記しましたが、正味の話しこれが何に使えるかは甚だ疑問のところでしょう。 この節では、示したデータをもとに考察を試みていきます。
ハウスルールを創る上で、重要になることは判定を行うサイコロを選定することです。 実際、システムによっては判定に用いるサイコロを規定しているものが多いですが、その枠から外れてみるのもハウスルールを作成する醍醐味とは言えないでしょうか。 実際、2D6を規定の判定サイコロとしているシステムでは、同じ値を示す1D12や3D4でも問題無いように思えるかもしれませんが、データで示したように算出される値の確率には違いが見られます。 一見、当たり前のように思われることですが、興味深い数値を示していると言えるでしょう。
どのサイコロの組み合わせにおいても、サイコロの数が増えるほど平均的な値を算出するような確率を示していますが、最大値のみを算出する割合は驚くほど低くなっています。 実際、1D8と2D4と言う最も単純なセットであっても、最大値(この場合は8)を算出する確率は、実に2倍も違います。
今回のデータセットを活用する上で、注意してもらいたい点があります。 それはある値以上が出る確率であるということです。 何度も書いていることですが、この点を忘れてはいけません。 4以上が出る確率と4が出る確率では、全く異なるのです。また、1〜4が出る確率とも異なります。 上記の3パターンは混同しやすいので注意したいところです。
しかし、大抵のシステムにおいて成否の判定は、ある値以上もしくは「ある値以下をサイコロで出せば良い」としています(本稿では、ある値以上を出せば良いと言うシステムを前提に考えています)。 すなわち、実際にどの値が出れば良いかは問題ではないのです。 そうなるとデータの通り平均値付近の値が高いものほど尊重されるべきセットであると言うことになります。 しかしながら、高い値を出さざる得ない状況では、平均値を算出するサイコロのセットでは弱い部分が出てきてしまいます。
注釈: 1D8において、5以上(5〜8)を出す確率は50%ですが、7以上を出さなければならない場合は25%しか可能性がありません。すなわち、25%も確率的には損失しているのです。 しかも、これが2D4ならば18.75%であり、5以上のとき(62.5%)に比べて実に43.75%の損失となります。 これは1D8に比べて、大変な損失と言えないでしょうか?
これはどういった問題を引き起こしてしまうのでしょうか? 互いにサイコロを振り合って、より高い目を出した者が成功するとしたときにおいて、1D8の場合は優劣が拮抗する可能性は低くなる一方、2D4ではその可能性がぐっと高くなります。 これは6以上を出す可能性が低いため、値が中心に寄ってしまうからです。 そうなってしまうと、サイコロを振る楽しみよりも如何に修正値を獲得するかが勝負の分かれ目となってしまいます。 言い換えるならば、サイコロの数が多いほど安定していますが、一発逆転要素が少ないとなります。
これはデザイナーのシステムに対するアプローチに重要な意図を示します。 サイコロにおけるランダム性を極力少なくしたい場合は、サイコロの数を増やし、その逆ならば減らすべきです。 しかしながら、サイコロを増やすほどゲーム性というものは失われていくことに注意すべきです(ゲーム性というものがランダム要素によって形作られているならば)。
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